想像力がない

昔から想像をするのは好きだった。本を読むのも映画を見るのも好きだし、そこからアナザーストーリーを考えたりもよくする。学生時代には教室が雲の上だと仮定してソロソロフワフワと歩いてみたり、電車に乗ったら車窓から人家の灯りを見てその人々の人生を考えたり。

 

だから自分は多少の想像力があると思っていた。けどそれは間違いだった、私のは想像力ではなく妄想力だったのだ。

 

大人になってから「もっと想像力を働かせて」「相手がどう思うか考えなかったの?」「もっと先を見据えて、計画的に」と言われることが増えた。言われていくうちに、ああ自分には圧倒的に想像力が欠如しているのだなと、やっと気付いた。

 

どうすれば効率的に計画的に動けるのか。相手が望んでいることは何か。どうしたら喜んでもらえるのか。こういったことに関して恐ろしく要領が悪い。気をつけているつもりでも常人からしたら全然出来ていないらしく、迷惑をかけてしまう。考えなければ頑張らなければと思い行動するも、どこかトンチンカンなことをしてしまう。どんどん空回っていって、孤立していく。

 

困ったように諭す相手の顔はもう何度も見た。悲しい。悲しいけれど客観的に見たら悪いのはこちらだ。だって傍若無人に振る舞って迷惑をかけているのだから。だから悲しいなんて思っちゃいけない。けどやり場のない悲しさは溜まってどうしたらよいか分からない。

 

相手のことを考える、空気を読む。それを考えた時、真っ暗な洞窟にいるような感覚になる。単純そうなのにはっきりとした答えがない。考えれば考えるほど迷い、墓穴を掘り、空回って出口が分からなくなる。

 

自然体でいたいけれど、社会で生きていく以上コミュニティから逃れることは出来ないから、この想像力の無さを、知能の低さをなんとかしなくちゃと思う。何より周りにいる人を傷つけたくないし嫌われたくない。今は笑っていてくれてもいつか見放されるんじゃないか、そう思うととても怖い。

 

ありのままとわがままは違う。妄想力よりも想像力が標準装備されて欲しかったなぁ。